組織活性化の取り組み ISO認証を起点とした経営管理PDCA

組織活性化の一つの参考事例として、

千人規模の日系企業ベトナム現地法人における、組織活性化の取り組みについて、何をどのように行ったかをご説明します。

もともとの私のミッションは、製造業の現地法人に日本的経営思想を浸透させることで、
大きくは二つの事項がありました。
1.ISO認証を起点とした経営管理PDCA
2.管理職育成とチームビルディング

ここでは最初のテーマについてご説明します。

1.ISO認証を起点とした経営管理PDCA

(1)ISOと日本の品質管理

ISOというのは、英国起源の品質管理標準で、この認証を取得していることで一定以上の品質管理が行われていることが証明され、企業が仕入先企業を選定するにあたり、この認証取得を条件とする形で自社の品質管理を徹底する、顧客に対して自社のISO適合性を示すことが世界的に行われるようになったものです。

本来、品質管理は日本のお家芸であり、高度成長時代に日本製品のクオリティの高さが世界中で認められたのは、その活動によるものです。
デミング賞を設ける等の動きは行っていたものの、ISOのような形で取引先選定の基準にまで高め、それが連関する仕組みを作るところまでには至っていませんでした。
その仕組みを欧州が先んじて世界標準にしたもので、こうした仕組みづくりの巧妙さで見事に先を越されてしまった感があります。

従って、日本の製造業にとってISO認証取得は、従来当たり前に行ってきた標準化と品質管理・改善活動であって、特別なものではありません。
私の最初の勤務先はまさにそうした日本の製造業の典型的な存在で、社内に品質管理を指導する技術系エキスパートが居て各事業所を指導していました。私自身も管理部門在籍期間中に、そうした方々の指導を受ける幸運に恵まれたことと、各地の工場では若い現場の社員達が、先輩達に暖かく支えられながら緊張した面持ちでカイゼン活動の発表を行う微笑ましい姿を当たり前に見て来ました。

(2)作業手順書からISO認証取得まで

これに対して、私が着任した当時の現地法人は、作業手順書が無く、体系化された品質管理が行われていない状態でした。
ISO認証は、高品質・高付加価値製品の顧客である日本や韓国の企業との取引を行う上で必須であり、早急に正式な認証を取得する必要がありました。
私は取締役総務人事部長と同時にISO管理責任者に任ぜられ、1年で認証を取得する目標を立て、実行して行きました。

作業手順書を各現場で作ることが第一歩で、最初は殆どの現場従業員がPCを触ったことが無い、エクセルやワードの使い方が分からない状態を脱するため、総務人事部メンバーが総出でPC教室を開いて指導にあたりました。
製造現場だけでなく管理部門を含めた作業手順書のひな形を業務フロー形式で私が作成し、これを各部署で埋めて貰う作業を始めました。
製造現場の作業は複数の関連部署にまたがることが多いため、縦軸に時間の流れに沿った作業項目、横軸に部署名、管理基準、準拠規定欄を設けた業務フロー形式とし、その手順書を見ただけで作業方法と基準が全て分かるよう、写真・図表を駆使して行きました。
ISO管理責任者の他に、品質管理部の課長、専任担当が、作業の主導とスケジュール管理を行った結果、作業手順書が全部署で整えられ、各工程・作業で基準とするドキュメントも整えられて行きました。作業手順が変更になる場合は、真っ先に作業手順書が正式更新される段取りも定着して行きました。

ISO認証機関には様々なタイプ、レベルの法人があり、我々はその中でも最も厳しいとされる英国の認証機関を選定しました。
認証を取ることが目的ではなく、真に実質的に品質管理レベルを上げることが目的であったためです。
ISO認証取得は目標の一つではありましたが、あくまでそれは品質管理レベルを上げ、日々の活動をそれに準拠することで企業そのもののクオリティを上げることが本質的な目標でした。

企業そのもののクオリティを上げる活動の典型的なものは、毎月行う全部署の管理項目に対してPDCAを回すことで、認証取得にあたり、この月次管理表をISO管理責任者名で総括して社長に報告することを定常化して行きました。

作業標準が出来て、月次管理がこのような形で行われていると、毎年のISO認証に際しては、日々、毎月当たり前に行っている管理資料を提示する必要があるだけで、ISO認証の準備のために毎年特別な作業を行う必要は無くなります。

実は初回の認証のための評価を受ける際、その二か月前の段階で認証機関担当者からは、認証取得は無理だと言われていたのですが、こうした取組を最後の最後まで続け本番に臨みました。
監査の結果は、幾つかの不適合事項を指摘されながらも、その改善を所定の期間内に完了すれば認証が得られるところまで漕ぎつけ、見事それらの課題を期間内に解決し1年で認証を取るという目標を達することが出来たのです。

この1年間でのISO担当者達、従業員達の集中力、スキルの向上には目を見張るものがありました。
本当の意味での本番は、顧客である日本企業の品質責任者の監査で合格することでしたが、
1年前はPCを使ったことが無い、エクセルの使い方が分からないと言っていた現場の課長が、でかでかと各工程にカラー印刷で貼り出された作業手順書を指して、我々は全ての作業をこの作業手順書に基づいて実施していますと、堂々と語る姿を見て私は胸にこみ上げてくるものを抑えるのに必死でした。
見事、我々はその最大顧客から合格の判定を頂くことが出来たのです。

まとめ
1.ISO認証取得はそれ自体が目的でなく、企業クオリティを上げるためのツールである
2.月次管理を行うことが本質で、それによってISOが求める管理実体を作ることができる

次の記事で、その現地法人での管理職育成と組織活性化の取り組みについてご説明します。

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