組織活性化の取り組み 経営者の基本精神と組織整備・マネージャー育成

組織活性化の取り組みについては、これまでの経歴のあらゆる経験・学びが伏線となって、一つの体系的考え方、実践となって結実しました。

日本鉱業での学び、バッファロー時代のパナソニック出身役員による幹部育成研修での教え、ベトナム現地法人での取締役総務人部長としての自身を含めた管理職育成の取り組みなど、幾つかの経験が重なることで、あるべき姿が見えて来ました。

結論は、

経営者・管理職が他者への愛をその精神の基底に持ち、社会に貢献する企業の使命を企業理念とし、高位に立つ者としての矜持を持つことが組織運営の根幹であり、起点であるということです。

それを経営層からマネージャーへ、マネージャーから社員に落とし込んで行くことで、その使命への共感に裏付けられた自律的組織が形作られます。

そして、企業の使命を現実化するためのビジョン(将来構想)、ゴール(いつまでに何を成し遂げるか)が、リアリティ(実現性)のある戦略の上で定められ、それを含めて落とし込まれて初めて個々人の共感と意欲に支えられた強靭な組織になって行きます。従来の組織論には、この部分が決定的に欠落しています。この戦略・ビジョン・ゴール策定にはマーケティング分析・戦略が必要になるのですが、その説明は別項で行います。

私の考える「組織活性化のあるべき取り組み」を形作った経験は以下になります。

①ジャパンエナジー(日本鉱業)時代の学び

 ・経営層が社員のモラル向上運動を行い始めたが、真の社員教育は経営者が高位にある者の矜持を持つこと、失敗に対して潔く責任を取ることによって為されるのであって、モラル向上の矛先は経営層であると感じたこと

 ・品質管理エキスパート(技師長の職名だった)の存在は職能等級制度の有用性を表していた。部下を持たないが専門職として高い技能を持つ方々が企業の技術力を支え、技術標準化会議などで社を代表する存在となっていた。

②バッファロー時代のパナソニック出身役員による幹部育成研修での教え

 ・高い地位にある者の矜持

 ・社員に選ばれる会社、管理者であるべき

 ・マネージャーの役割はプロセスの変革である

 

③ベトナム現地法人での取り組み

 ・ホンダ現地法人に学ぶ企業理念落・品質管理方針の落とし込み、

   マネージャー育成とチームビルディング

会社は私の着任1-2年前に、日本人マネージャー育成のためのセミナープログラムを導入していました。ホンダベトナム出身者が独立してセミナー活動を行っていたもので、大手企業が現地法人を経営する際に日本人マネージャーに求められるマインド、企業理念を落とし込み、部下の管理・育成の在り方を指導する内容は、自身を律する上で非常に重要な学びとなりました。そのレジュメを自身を含めて日本人管理職同志で学ぶ機会を設け、自身の行動を改める契機にして行きました。

※ホンダはベトナムでのバイク市場のシェアが8割と、バイクのことをベトナム人が「ホンダ」と称するほど、圧倒的な地位を確立しています。

これは隣国のカンボジアでも同様でした。進出に際して市場独占の鍵を握る中古市場での転売可能性、修理・保全のための部品供給体制をいち早く確立することが定番施策となっていて、

それと合わせて現地法人運営にあたって日本人マネージャーの育成に力を入れて現地で確固たる地位を確立しているのだと思います。

 

その他の組織体制整備等の取り組みは以下になりますが、どれもが欠くことの出来ないテーマです。

 ・業務分掌規定、職務記述書+工数算定 等の組織基盤整備

部署間の役割分担、各人の職務範囲・使命を明文化しておく必要があります。

 ・人事制度設計:職能等級制度と役職制度の組み合わせ

役職制度一本しかないと、役職の乱発、役職者への信頼低下を招きやすいです。

部下を持つ管理職に適さないけれども専門性で企業に必要な人材に適正な給与と名誉を付与する職能等級制度が生きて来ます。

 ・退職社員抑制:社員の幸福度向上、退職抑制が生産性の維持に繋がる

退職者を補充して一人前に育てるには、採用費用だけでなく教育に要する時間が必要なほか、本来の生産性に達するまでに数か月を要する場合があり、コスト・生産性の面で退職者を新人で補うのはマイナスになります。

 ・カイゼン活動・QC、ISO:

   何故日本人にしかカイゼン活動が出来ないのか:日本の根源的な思想

   カイゼン活動・QC、ISOについては、各々別項で取り上げます。

④数々の反面教師達

ベトナムをはじめとした海外現地法人、外国企業での勤務での幾つかの反面教師を列記します。記事を読まれる方が、自身がこのような状態に陥っていないかを顧みる上でお役に立つと思います。

・社員はカネと恐怖で動くという根本的に誤った考え方で、次々と飴と鞭の施策を繰り出すも、一向にマネジメント層も社員も育たない、というのが典型的事例です。

 人事の専門家は理解していると思いますが、人々が働く会社を選択する基準は給料の高さがトップではなく、そこでの遣り甲斐、自己実現の可能性が最大の動機です。そこに、ノルマを達成したら褒章を与え、達成しないと減給・降格するといったやり方では、自発性を引き出すことはおろか、人を惹き付けることが出来ません。

・現地人社員に対しては気を遣うが、日本人社員に対してはパワハラ三昧の日本人経営者

現地人の尊敬を集めようと努力するものの、日本人マネージャーに対しては、日本企業に根付いてしまった悪しき慣習である、上の者は下に対してどんな横暴な発言も許されるという発想が日系現地法人で頻繁に見られます。これでは、要となる日本人マネージャーを育てることが出来ず、自発性を引き出すことは出来ません。

・経営者が現地人の尊敬を集めようと部下の役員層を飛び越えて「有難いお話」、リーダーシップ論を現地人マネージャーの退勤後の時間を使って施す。

経営者の名誉欲が組織を壊して行くだけでなく、このような動機に基づく講話は、言行不一致(立派な事を言いながら自身はそれを実行出来ていない)に気付かず、日本人マネージャーからの信頼を悉く失って行った事例があります。

 他にも幾つもの事例がありますが、ベトナムに関する項で詳しく説明します。

⑤自身が到達した経営者のあるべき姿:

 ・他者への愛が全てである

 ・経営者の役割は「経営」である。企業の将来像を形成するための営みである。

  日常のオペレーションはNo2以下の仕事。

  No2で得られる人材が最も重要、それが日本人であるか、現地人であるかに関わらない。このポジションの人材獲得・育成に、最大限の情熱を注ぐべき。そこが核になってマネージャー育成・人材発掘・登用を行うことで、モラルの高い人材・組織が育つ。

これらの理念から実務までを「中小企業経営者のための法人営業の教科書 マーケティング思考の営業戦略と自律的組織運営」にまとめ、Webセミナーを提供しています。

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システム化の本質

システム化の本質

私が唱える3ステップ経営改革は、法人営業・事業企画のエキスパートとしての経験と総務人事役員経験が基となっていますが、私が得た特異なスキルがそれらの経験を支えています。

それがシステム開発の経験で、それを通してシステム化するとは何か、その本質は何か、という根本思想に基づくシステム化・経営革新の他、実務面で業務の流れを俯瞰し見える化し業務効率の向上を図ることが出来ました。

何故、何も知らない新入社員の私が基幹システムプロジェクトに選ばれたのか

新卒で入社した際、私は電子材料事業部門の営業職として配属されたのですが、通常であれば特定の製品を担当する営業課に配属になるべきところ、管理室という経理・企画部門に配属となりました。実はこの当時、所属事業部ともう一つ、会社の大黒柱となっている大事業部が共同で営業情報システム開発を行うプロジェクトが立ち上がり、新入社員の私がそのメンバーの一人に選ばれたのです。

プロジェクトは非常に人望のある大事業部の管理部門長をトップに、電子材料事業部の営業課長がリーダーとなり、大事業部の経理エキスパート、システム管理マネージャーに営業担当者としての私が事業部側、つまり発注者側の業務設計メンバーとなり、情報システム部の課長が多数の開発メンバーを束ねるために加わるという構成でした。

私にとっては非常に名誉であり且つエキサイティングなことでしたが、私のように何も営業実務を経験していない者がそのような重要なプロジェクトメンバーであって良いのだろうかというのが率直な不安、疑問でした。

初期のミーティングで率直にこの疑問をトップにぶつけたところ、非常に驚くべき答えが返って来ました。

「何にも知らないからこそ君をメンバーに入れたんだ。余計な雑念の無い者が、この業務はどうあるべきかの理想形を描くことが出来る。仕事の始まりから終わりまで、あるべき姿を業務フローにして一筆書きで描いてごらん。

これまでのシステム開発は、情報システム部門が主体になって膨大な時間をかけて現状調査をつぶさに行って、その現状をシステムに置き換えるということが常態化していた。そのために、多数の不要な業務がシステムに置き換えられ、全体像が見えない業務の効率化からほど遠い結果を生んできた。

システム化するとは、業務を体系化することである。誰が見ても仕事の本筋が容易に理解出来るものにすることだ。

そのツールとしてコンピュータシステムを導入することで、一気に効率を上げることが出来る。

今回の開発では、君があるべき姿の業務フローを描いてごらん。一筆書きのような業務フローになるはずだ。その本流に、どうしてもすくい切れない例外を位置づけてごらん。それがプロジェクトで確定出来たら、それを各現場に持って行って、今の仕事をこのように置き換えることが現実的に出来るかを聞いて回ってごらん。

そうすれば、本質を見失わずに短時間で、実現性の検証が出来るはずだ。」

この衝撃的な答えに私は一気に魅了されました。この考えが、その後の人生でシステム化を考察する際、業務効率化を図る際の私の根本理念となりました。

そしてこの方針に則って私は自分のミッションを果たして行きます。

生産から倉庫への入出庫報告、受注から出荷、債権回収までの業務が全て一気通貫のシステムによって体系化されました。

私が描いた業務フローは、会議室を一往復する長さの、まさに一筆書きとなりました。

どんなメジャーなシステムにも無い画期的な「〇〇未報告」画面

システムには、経理エキスパートの発案で各業務フェーズでの「〇〇未報告」画面が設けられました。一度受注報告が入れば、債権回収が完了するまで、システム上、どの段階がクリア出来ていないか、残るタスクが何かが、一目瞭然で分かります。

システム稼働後、アシスタントの女性社員達に最も好評だったのはこの画面です。彼女達は、毎朝この画面を立ち上げ、今日のやるべきことを一目で把握することが出来、仕事の漏れは一切起きません。

後年になって世界を制覇したSAPシステムやセールスフォースドットコムなどを使用する機会がありましたが、このような便利で本質的な機能を持ったシステムには出会ったことがありません。もし、システム企画をする方がこのブログをご覧頂く機会があれば、この情報は値千金ではないかと思います。

システム開発の王道であるコード設計と取引先概念の定義

合わせて、システム開発の王道である、製品及び取引先コード設計が3階層で緻密になされて行きます。取引先には大きく分けて3つの属性があり、販売先(お金を貰う先)、仕向先(実際の製品利用者)、納入先がそれです。その組み合わせを決済条件マスターに予め登録し、その組み合わせにある受注登録しか出来ないようにして管理します。

仕向先(製品利用者)毎の予算実績管理が営業の本質

販売先と製品利用者が同一である場合、販売先と製品利用者が異なる場合がありますが、この設計と運用によって、入金管理と実利用者への販売実績管理が当たり前に行えます。

商社毎の販売実績、実利用者への販売実績を製品群毎に把握することは非常に容易に出来ます。

システム設計と営業管理の両方の基本が欠落したメジャーシステム

近年世界で最も高いシェアを獲得しているセールスフォースドットコムを使用した経験がありますが、このシステムでは販売先としての属性を個別の取引先マスターに入れ込んで行くのですが、実運用上は実行不能でした。そのため、販売先単位での実績、仕向先単位での実績を把握することがシステム上では不可能で、且つこのシステムでは最も法人営業で必要な、取引先毎の予算実績管理の機能が無く、この不足を補うためにダウンロードデータのエクセルと毎週格闘する必要があって非常に閉口しました。

この会社はシステム開発の素地、及び法人営業の本質的経験の無いところで、ユーザインターフェイスのビジュアル化と広告で顧客を獲得して行ったことが窺われます。

情報システム部門の限界

先ほどの自社システム開発では、各関係部署での新業務フロー検証のヒアリングは順調に進んで、私が描いた業務フローが各部署で問題なく適用出来ることが確認出来、プログラム開発をいよいよ進めようという段階で、ある工場の情報システム部門が、このやり方では実現性に不安があると言いだしました。この段階で私の尊敬するプロジェクトトップが他部署へ異動となっていたため、プロジェクトは一旦彼等の言い分を受け入れて、彼等が考える方法で実現性検証をやって貰うことにしました。

結果として、プロジェクトが半年遅延することとはなりましたが、我々の描いたフローが彼等から見ても適用可能との結論に達し、開発が進められました。

この間に、本社情報システム部門は、2か所の大工場、数か所の倉庫については、所謂分散処理をするのが望ましいとの判断から、個別のコンピュータを配置する構成とすることを決定します。プロジェクトの一員として、その会議で私は分散処理に大反対しました。同じシステムフローでありながら、本社と工場と倉庫各々コンピュータの機種が違うため、開発に膨大な工数がかかる上に、一つのシステム変更が起きると3つのプログラム開発が必要となる不効率、更に本質的には、どこかの事業所のコンピュータが止まった場合、システム全体としては機能しなくなるため、このような分散処理はシステム上のリスクが高すぎる、

それを回避するためには、本社コンピュータ一本で集中処理を行い、それを二重化すべきだと強く主張したのですが、あいつを情報システム会議に出させるな、という話になって、彼等は分散処理を取ることを決めてしまいました。

H工場で生産された製品がK倉庫に転送され在庫されたりしますが、K倉庫のコンピュータが止まった場合、システム全体として見た場合、正しい在庫を把握することが出来なくなる訳で、場所を分散するだけのシステムは本質的に何のリスクヘッジにもなっていません。

自社開発システムの成功とその後のキャリアへの寄与

これらのように旧来の情報システム部門的な考え方が、本質から外れていると言わざるを得ない部分が多々あるものの、

プロジェクトは開発を終え、私は厚さ3㎝ほどの全体像と個別操作はこれ一冊で分かるA4版マニュアルを作成し全個所に配布して、従来業務を新システムに成功裏に移行することが出来ました。

ここでの経験が、その後のキャリアにおいて、

課員12人の業務を業務フローで見える化して、業務の重複を排除し、6人を本来の業務責任部署に戻すことで6人のチームにスリム化したり、

生産管理システムの導入を行ったり、

システムインテグレータとしては安易な分散システムを1か所に集中した上で二重化するのが本質的ソリューションである、といった提案をする際に活かすことが出来た他

業務フロー化することで、作業手順書をビジュアルにして分かりやすくして社内の標準化を図ったり、改善点の協議を行う際に役立てることが出来ました。

 

本稿のまとめ:

システム化の本質は体系化である、

システム化を行う際の手順はまず理想形を一筆書きの業務フローで描き、それの実現性を検証する方法が最も本質から逸れずに効率化が出来る、

業務フローによる見える化を図ることで、標準化・共通認識形成が実現出来る

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組織活性化の取り組み ISO認証を起点とした経営管理PDCA

組織活性化の一つの参考事例として、

千人規模の日系企業ベトナム現地法人における、組織活性化の取り組みについて、何をどのように行ったかをご説明します。

もともとの私のミッションは、製造業の現地法人に日本的経営思想を浸透させることで、
大きくは二つの事項がありました。
1.ISO認証を起点とした経営管理PDCA
2.管理職育成とチームビルディング

ここでは最初のテーマについてご説明します。

1.ISO認証を起点とした経営管理PDCA

(1)ISOと日本の品質管理

ISOというのは、英国起源の品質管理標準で、この認証を取得していることで一定以上の品質管理が行われていることが証明され、企業が仕入先企業を選定するにあたり、この認証取得を条件とする形で自社の品質管理を徹底する、顧客に対して自社のISO適合性を示すことが世界的に行われるようになったものです。

本来、品質管理は日本のお家芸であり、高度成長時代に日本製品のクオリティの高さが世界中で認められたのは、その活動によるものです。
デミング賞を設ける等の動きは行っていたものの、ISOのような形で取引先選定の基準にまで高め、それが連関する仕組みを作るところまでには至っていませんでした。
その仕組みを欧州が先んじて世界標準にしたもので、こうした仕組みづくりの巧妙さで見事に先を越されてしまった感があります。

従って、日本の製造業にとってISO認証取得は、従来当たり前に行ってきた標準化と品質管理・改善活動であって、特別なものではありません。
私の最初の勤務先はまさにそうした日本の製造業の典型的な存在で、社内に品質管理を指導する技術系エキスパートが居て各事業所を指導していました。私自身も管理部門在籍期間中に、そうした方々の指導を受ける幸運に恵まれたことと、各地の工場では若い現場の社員達が、先輩達に暖かく支えられながら緊張した面持ちでカイゼン活動の発表を行う微笑ましい姿を当たり前に見て来ました。

(2)作業手順書からISO認証取得まで

これに対して、私が着任した当時の現地法人は、作業手順書が無く、体系化された品質管理が行われていない状態でした。
ISO認証は、高品質・高付加価値製品の顧客である日本や韓国の企業との取引を行う上で必須であり、早急に正式な認証を取得する必要がありました。
私は取締役総務人事部長と同時にISO管理責任者に任ぜられ、1年で認証を取得する目標を立て、実行して行きました。

作業手順書を各現場で作ることが第一歩で、最初は殆どの現場従業員がPCを触ったことが無い、エクセルやワードの使い方が分からない状態を脱するため、総務人事部メンバーが総出でPC教室を開いて指導にあたりました。
製造現場だけでなく管理部門を含めた作業手順書のひな形を業務フロー形式で私が作成し、これを各部署で埋めて貰う作業を始めました。
製造現場の作業は複数の関連部署にまたがることが多いため、縦軸に時間の流れに沿った作業項目、横軸に部署名、管理基準、準拠規定欄を設けた業務フロー形式とし、その手順書を見ただけで作業方法と基準が全て分かるよう、写真・図表を駆使して行きました。
ISO管理責任者の他に、品質管理部の課長、専任担当が、作業の主導とスケジュール管理を行った結果、作業手順書が全部署で整えられ、各工程・作業で基準とするドキュメントも整えられて行きました。作業手順が変更になる場合は、真っ先に作業手順書が正式更新される段取りも定着して行きました。

ISO認証機関には様々なタイプ、レベルの法人があり、我々はその中でも最も厳しいとされる英国の認証機関を選定しました。
認証を取ることが目的ではなく、真に実質的に品質管理レベルを上げることが目的であったためです。
ISO認証取得は目標の一つではありましたが、あくまでそれは品質管理レベルを上げ、日々の活動をそれに準拠することで企業そのもののクオリティを上げることが本質的な目標でした。

企業そのもののクオリティを上げる活動の典型的なものは、毎月行う全部署の管理項目に対してPDCAを回すことで、認証取得にあたり、この月次管理表をISO管理責任者名で総括して社長に報告することを定常化して行きました。

作業標準が出来て、月次管理がこのような形で行われていると、毎年のISO認証に際しては、日々、毎月当たり前に行っている管理資料を提示する必要があるだけで、ISO認証の準備のために毎年特別な作業を行う必要は無くなります。

実は初回の認証のための評価を受ける際、その二か月前の段階で認証機関担当者からは、認証取得は無理だと言われていたのですが、こうした取組を最後の最後まで続け本番に臨みました。
監査の結果は、幾つかの不適合事項を指摘されながらも、その改善を所定の期間内に完了すれば認証が得られるところまで漕ぎつけ、見事それらの課題を期間内に解決し1年で認証を取るという目標を達することが出来たのです。

この1年間でのISO担当者達、従業員達の集中力、スキルの向上には目を見張るものがありました。
本当の意味での本番は、顧客である日本企業の品質責任者の監査で合格することでしたが、
1年前はPCを使ったことが無い、エクセルの使い方が分からないと言っていた現場の課長が、でかでかと各工程にカラー印刷で貼り出された作業手順書を指して、我々は全ての作業をこの作業手順書に基づいて実施していますと、堂々と語る姿を見て私は胸にこみ上げてくるものを抑えるのに必死でした。
見事、我々はその最大顧客から合格の判定を頂くことが出来たのです。

まとめ
1.ISO認証取得はそれ自体が目的でなく、企業クオリティを上げるためのツールである
2.月次管理を行うことが本質で、それによってISOが求める管理実体を作ることができる

次の記事で、その現地法人での管理職育成と組織活性化の取り組みについてご説明します。

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ジェイ・エイブラハムに学ぶマーケティング戦略

逆境を「飛躍」に変えるマーケティング戦略 ジェイ・エイブラハム からの学び

現代最高のマーケティング・経営コンサルタントであるジェイ・エイブラハムが

2008年のリーマンショック後に絶望した事業主のために書き下ろした本を2022年6月にダイレクト出版が翻訳・出版したものです。

私が書いたダイレクト出版への書籍レビュー:
「これまで読んだビジネス書で最も深く、最も多くの学びを与えてくれた書籍です。

これを出版して下さったことに心からお礼を申し上げます。良書を読むたび要約メモをすると4-5ページになるのが常ですが、ここに書かれている重要なことが余りに多くて要約のつもりが20ページになってしまいました。
マーケティング戦略については、ジェイならではの突出した考え方を多彩な事例を含めて学べます。
しかし、この本は単なるマーケティング論ではなく、経営の在り方そのものの教科書であり、更には他者への愛を基盤としたものの考え方を教えてくれます。

マーケティングイノベーション戦略化が停滞を打破するキーだが、その前に現状の最適化をしなければならない、既存リソースを活かし切ることだと説きます。
中小企業経営者の殆どが、こうした考え方が出来ていない、という彼の言葉は、日本においても全く同じであるというのが、私自身の所属企業履歴と多くの顧客と接した実感と完全に合致しています。
中小企業経営者、起業家向けに書かれたものですが、かつて大企業に所属していた者から見ると大企業の事業所責任者、経営層もこの書籍に学ぶべきです。

つまり、ビジネスマン全てにとって必読の書だと思います。」

私の著作は、中小企業経営者が抱える販売不振と組織不活性の問題への解決策を、

法人営業の専門家且つ組織活性化を担う総務人事役員経験者として記したものですが、ジェイのいう「既存リソースを活かす」、企業基盤を立て直し・整備する土台を成すための具体策を提示する位置付けにあると考えます。

マーケティングとは何か

中小企業経営者のための法人営業の教科書 マーケティング思考の営業戦略と自律的組織運営 松任柊二 におけるマーケティング概念との対比

ジェイ・エイブラハムの言うマーケティングは、

①自社のポジショニングを行う上での分析・戦略構築

②広告や企業間連携等の施策

を言いますが、私の著作では①を対象にして、これを深く掘り下げています。

私が最初に所属した大企業では、市場調査による事業戦略・営業戦略の構築はごく当たり前に行われていたのですが、その後に所属したり顧客として接した中小企業で、

ほぼ全てこのプロセスが欠落していたのです。

マーケティング用語でいうターゲット市場のセグメンテーションと自社のポジショニングということになりますが、本来これ無くして事業計画・営業戦略はあり得ません。

これを欠いたまま、営業部門に竹槍で戦いを挑ませるのでは、貴重な社員のリソースを空費し続けるだけです。

ジェイが言う「現状の最適化」の第一歩、現状を踏まえた戦略化がこれであり、

私の著作では、この思考プロセス・細分化方法を詳細に説明しています。

そして、ジェイにも私にも共通する次のステップが、貴重な社員のリソースを活かすことです。彼の真骨頂は、これを実利的な発想からでなく、他者への愛が思想の根幹にあることです。

「顧客・取引先・スタッフを愛し、彼等に対する仕事、理解、敬意、感謝を通して、彼等の生活をより良いものにしようと心から思うことが必要だ。」と彼は言います。

実は、私が千人規模の企業で総務人事役員の経験を経て到達した根本思想は、彼のものと全く同じだったのです。これ無くして社員の共感と、それに基づく自発性を得ることは出来ません。

私の著作では、基本的考え方に始まり、自律的人材を育てて組織を活性化するための具体的手順を詳細に明らかにしています。

実は殆どの中小企業経営者がここで挙げた二つの基本、マーケティング分析による戦略化人材育成・組織自律化の在り方を体系的に学んだり実務経験が無く、その欠落の自覚さえ無いと感じます。

ジェイのコンサルティングは、これらの上に更に上記の②広告や企業間連携等の施策について、膨大なアイディアと実績を基に最適な解を授けてくれます。

本書だけでも、何と103個の事例が紹介されていて、これを読むだけで事業のブレイクスルーを図ることが出来る場合があるのではないでしょうか。

ダイレクト出版が毎月ジェイ・エイブラハムの講義を受けられる月額課金プログラムを運営していて、このグループに参加して発言の機会が得られると、自社の課題に対する解決策の指導をその場で受けることも出来るのですが、

法人向け事業経営者の皆さんには、そこに参加する前に是非私の著作を読んで頂ければ、まず自力で戦略的検討を行って、問題を整理し、実務的に人材を活かす施策での課題を把握することが出来、更にジェイの経験には無い営業戦略・戦術の本質的内容を理解して頂くことが出来ます。

こうした検討と問題整理を経たうえで、ジェイの指導を受けることが出来れば、極めて的確なアドバイスが得られ、提示された施策を実現して行く企業基盤を既に固めたうえで実効を上げられるのではないかと思います。

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